STORY
かつて日本には縄文人が住んでいた。
彼らの間には階級など存在しなかった。
森は、栄養たっぷりな様々な種類の食材を提供し、彼らはそこで狩猟採集を行い生活した。
己が生きるために他の動物の命を頂く。たくさんの目に見える循環が生活の中にあり、人間もその役割の一部を担っていた。
彼らは自然と共に生きていた。
あるとき人間は産業革命を機に、都市を形成した。
火、山の水、肥沃な土壌や植物、動物など、多くの人間は自らの血肉になるものから距離を置くようになった。
お金を介した生活が一般的になり、自らが技術を習得せずともほとんどのものをお金で簡単に手に入れることができるようになった。生活はより快適で便利になった。
しかし同時に、お金がないと社会で生活していくことは難しくなった。
一方遠い国では、今でも縄文人のような生活を送っている人々がいる。
自然、生き物、動物達は、皆彼らを手助けする。
都会にも訪れたことがある森の人は言った「何故あなた達はこんなにも豊かな暮らしを捨て、幼稚な生活をしているのだ。自然との共存を第一に考え社会を発展させていれば、想像もできないほど豊かな社会ができただろうに」と。
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真の豊かさとは何なのか。人間と自然の関係はどうあるべきか。人間世界と森の世界、それぞれで感じる豊かさは全く違う。
私は現在福島県の大玉村という田舎に住んでいる。ここでの生活を通して気づいたことがたくさんある。火、山の水、肥沃な土壌、動物が近くにある。自分が食べる野菜を畑で育てることで、自分自身の身体を作る。多くの循環が生活の近くにあることで、心に豊かさが生まれる。人間社会での解決策と、森が教えてくれる解決策の、どちらかをその都度選択することができるのも、心の豊かさにつながる。私は人間と自然、2つの世界が溶け合い混じり合う空間の片鱗を大玉村で体験しているように思う。私はいつか、そんな空間を日本のあらゆる場所(主に都心部)に作り出したいと思っている。
私は「建築」「アート」「畑」「作家」さまざまな分野を横断して日々思考を続けている。建築は人々の生活の基盤であり、その形態、内部に入れる用途を変更すれば、住む人の生活スタイルは変化し、やがて定着する。「人間と自然の境界に建つ建築」を考え、ドローイングでは、私が目指す新しい未来の設計図を描いている。そのほかにも、アートでは「身の回りの循環の可視化」を、畑では「地表を見つめ、触れ、世界、身体と対話」を、作家では「ポセミンというキャラクターの物語制作」を行っている。
Atelier BOOOM! 松本悠以